不動産業界の平均年収概況

不動産業界の平均年収は、職種や企業規模、地域によって大きく異なります。全体としては平均以下とされていますが、特定の職種や企業では高収入を得られるケースもあります。
この章では、業界全体の平均年収、職種別の平均年収、大手企業の平均年収ランキング、中小不動産会社の年収事情などについてくわしく見ていきましょう。
業界全体の平均年収
2023年の給与所得者数は5,076万人、その平均給与は460万円となっています。不動産業界全体の平均年収は約409万円とされています。これは他業界と比較して平均以下の水準です。
ただし、営業職などでは成果に応じたインセンティブが加算されるため、個人の努力次第で年収を大きく伸ばせます。
出典:
令和5年分 民間給与実態統計調査|国税庁
出典:
産業、年齢階級別賃金及び対前年増減率|厚生労働省
職種別の平均年収
不動産業界内の職種別データは国の統計はありません。そこで、民間調査、求人情報メディア「doda(デューダ)」の最新データを参考に挙げておきましょう。
2023年9月~2024年8月の1年間にdodaサービスに登録した約60万人の平均年収のデータを業種別に集計した「平均年収ランキング」によれば、「建設/プラント/不動産」というカテゴリの平均年収は441万円です。
カテゴリ内では、さらに12の職種に分けられており、上位から次のようになっています。
・1位「ディベロッパー」:511万円
・2位「不動産金融」:500万円
・3位「ゼネコン/サブコン」:475万円
・4位「土地活用」:456万円
・5位「住宅(ハウスメーカー):449万円
・6位「建設コンサルタント」:443万円
・7位「設備関連/プラント」:439万円
・8位「不動産管理」:429万円
・9位「不動産仲介」:413万円
・10位「設計事務所」:404万円
・11位「設備管理/メンテナンス」:403万円
・12位「内装/インテリア/リフォーム」:399万円
参考:
年収の高い業種(業界)は? 平均年収ランキング(業種別の平均年収/生涯賃金)【最新版】
「不動産仲介」の営業職の場合、基本給に加えて歩合(インセンティブ)が支給されるケースが多く、成果次第で高収入を得られます。
特に高額な物件を取り扱う場合、1件の契約で大きな報酬を得られる場合もあるでしょう。ただし、取り扱う物件の種類や価格帯によっても収入は変動します。
なお、事務職は未経験でも事務スキルがあれば活躍できる職種ですが、営業職に比べてインセンティブが少ないため、年収はやや低めとなる傾向があります。
【不動産分野での起業を考えておられるみなさんにおすすめの記事】
不動産分野での起業の際の集客のアイデアについて、以下の記事でくわしく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
不動産起業の成功への道|アイデアから実践までの徹底ガイド|不動産Web集客コラム
大手企業の平均年収ランキング
不動産業界の大手企業では、平均年収が高い傾向があります。こちらも民間の調査を参考に見ていきましょう。
たとえば、ヒューリックの平均年収は約1,761万円で業界トップクラスです。次いで、日本商業開発(現:地主株式会社)が約1,501万円、三井不動産が約1,263万円となっています。
これらの企業は都心部を中心にオフィスビルや商業施設の開発・運営を手掛けており、高収益を上げています。上位を占める大手企業では、従業員数が比較的少なく、平均年齢も30代後半から40代前半と若手が多いのが特徴です。
高い専門性や実績が求められるため、採用基準も厳しく、競争が激しい環境といえます。しかし、その分成果に応じた高い報酬が期待できるため、キャリアアップを目指す人にとって魅力的な職場となっています。
一方で、これらの高収入企業は都心部に集中しており、地方の企業との間で年収格差が生じています。また、企業規模や事業内容によっても給与水準は異なるため、転職や就職を考える際には、企業の業績や給与体系の事前調査が重要です。
参考:
不動産企業の平均年収ランキング1位~136位【2025年最新版】
不動産業界の業務に欠かせない「コンプライアンス」の強化方法ついては、以下の記事で特集しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
不動産業界のコンプライアンス強化ガイド【中小企業向け実践的アプローチ】
中小不動産会社の年収事情
不動産業界における中小企業の年収は、大手企業と比較して低い傾向があります。また、地域差や企業規模も年収に影響を与える要因です。
ここでは中小企業の平均年収と大手との比較、地域差による年収の違い、企業規模と年収の相関関係について解説します。
中小企業の平均年収と大手との比較
一般的に、大手企業の平均年収は中小企業よりも高い傾向があります。これは、企業の収益性や福利厚生の充実度、昇進機会の多さなどが影響しているからです。
一方、中小企業ではこれらの面で劣る場合が多く、結果として平均年収が低くなる傾向があります。具体的な数値で見ると、大手企業の平均年収は中小企業よりも数十万円から百万円以上高い場合があります。
これは、企業規模に応じた給与体系や報酬制度の違いによるものです。また、大手企業ではボーナスや各種手当が充実している点も、年収差の一因となっています。
しかし、中小企業には大手企業では限定的な「柔軟な働き方」や「アットホームな職場環境」などの魅力もあります。そのため、年収だけでなく、働きやすさや自己成長の機会など、総合的な視点で就職先を選ぶ姿勢が重要です。
不動産業界で成功するための、動画広告のトレンドと成功事例については、以下の記事で特集しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
不動産会社は必見!動画広告のトレンドと成功事例を徹底解説|不動産Web集客コラム
地域差による年収の違い
不動産業界における年収は、地域によっても差があります。一般的に、都市部では不動産取引が活発であり、物件価格も高いため、従業員の年収も高くなる傾向が強いです。一方、地方では取引件数や物件価格の点で都市部に劣るため、年収も低くなります。
たとえば、東京都や大阪府などの大都市圏では、不動産業界の平均年収が高い傾向があります。これは、高額な物件の取引が多く、手数料収入も増えるためです。一方、地方都市や郊外では、取引規模が小さく、収益性も低いため、年収も低くなる傾向があります。
また、地域の経済状況や人口動態も年収に無関係ではありません。経済が活発で人口が増加している地域では、不動産需要が高まり、業績が向上しやすくなります。その結果、従業員の給与にも好影響を与えるのです。
不動産会社が地域で成功するためのMEO対策については、以下の記事で特集しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
不動産会社が成功するためのMEO対策完全ガイド!成功事例と具体的な戦略
企業規模と年収の相関関係
企業規模と年収には一定の相関関係が見られます。大手企業は資本力があり、収益性も高いため、従業員に高い給与を支払う余裕があるわけです。福利厚生や教育制度も充実している場合が多く、総合的な待遇がよい傾向があります。
一方、中小企業では資金力や収益性に限界があるため、大手企業に比べれば給与水準が低くなりがちです。しかし、その分、社員一人ひとりに任される業務範囲が広く、早い段階で実務経験を積めるというメリットもあります。
また、意思決定のスピードが速く、柔軟な働き方が可能な場合も多いです。したがって、企業規模だけでなく、自身のキャリアプランや働き方の希望に合わせて、職場を選ぶ姿勢が重要です。
大手企業の安定性や高収入を重視するのか、中小企業での幅広い経験や柔軟性を求めるのか、自分の価値観に合った選択が求められます。
不動産業界で差別化を図るブランディング戦略については、以下の記事で特集しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
不動産業界で差別化を図るブランディング戦略とは?|不動産Web集客コラム
不動産業界の年収に影響を与える要素

不動産業界における個人の年収は、複数の要素によって左右されます。
この章では、キャリア形成や収入向上の具体的な戦略を立てるために役立つ、個人の経験年数やスキル、資格の有無、企業業績とインセンティブ制度などの、年収に影響する要因についてくわしく見ていきましょう。
経験年数とスキル
不動産業界では、経験年数が増えるにつれて平均年収も上昇する傾向が強いです。20代前半の平均年収は300〜400万円程度であっても、50代では600〜700万円程度に達するといわれています。
これは、長年の経験により培われた専門知識や顧客との信頼関係が、業績向上や高収入に直結するためです。また、営業スキルや交渉力、マーケティング能力などの実務的なスキルも、年収に大きな影響を与えます。
高いコミュニケーション能力や問題解決能力を持つ人材は、顧客からの信頼を得やすく、成果を上げやすいからです。その結果、インセンティブや昇進の機会が増え、年収の向上につながります。
さらに、自己啓発や継続的な学習を通じて新たなスキルを習得するのも有効です。市場の動向や最新の技術に対応できる柔軟性を持てば、企業内での評価が高まり、給与面での優遇を受ける可能性が高まります。
資格の有無
不動産業界では、特定の資格の保有が年収に直接的な影響を与えます。代表的な資格は「宅地建物取引士(宅建)」です。宅建の資格を持っていれば、重要事項の説明など専門的な業務を担当できます。
その結果、企業からの評価が高まり、資格手当や昇進の機会が増えるでしょう。また、「不動産鑑定士」や「ファイナンシャル・プランニング技能士」などの資格も、専門性の高い業務に従事する際に有利となります。
これらの資格を取得すれば、コンサルティング業務や資産運用のアドバイスなど、より高度な業務に携わる機会が増えて、結果的に年収の向上につながるでしょう。
さらに、資格取得は自己のスキルアップだけでなく、顧客からの信頼獲得にも寄与します。専門知識を有する証明となるこれらの資格は、顧客に対して安心感を提供し、契約の成立やリピートにつながる可能性を高めてくれるでしょう。
中小不動産会社のWebマーケティングに欠かせない、リスティング広告内製化のメリット・デメリットや課題に関しては、以下の記事でくわしく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
中小不動産会社が知っておくべきリスティング広告内製化のメリット・デメリット・課題とは?
企業業績とインセンティブ制度
不動産業界では、企業の業績や個人の営業成績に応じて、年収が大きく変動するものです。多くの企業がインセンティブ制度を導入しており、個人の成果に応じて報酬が支払われる仕組みとなっています。
たとえば、高額な物件の契約を成立させた場合、その手数料の一部がインセンティブとして支給されるケースも少なくありません。
このような成果主義の報酬体系により、優れた営業成績を上げる社員は高収入を得られます。一方で、成果が上がらない場合には収入が伸び悩みがちなため、自己の業績向上に向けた努力が求められます。
また、企業全体の業績もボーナスや昇給に直結します。業績が好調な企業では、社員への還元として賞与が増加する傾向があります。そのため、個人の努力だけでなく、企業選びの際には業績や将来性も考慮するべきでしょう。
不動産会社が最新マーケティング手法で、競争優位を築く方法に関しては、以下の記事で特集しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
【不動産会社必見】最新マーケティング手法で競争優位を築く方法|不動産Web集客コラム
【雇用側視点】中小不動産会社が取るべき人材戦略

中小不動産会社が競争力を維持・向上させるためには、給与体系の見直しや福利厚生の充実、キャリアパスの明確化など、多角的な人材戦略が求められます。
これらの取り組みにより、優秀な人材の確保と定着を図れるようになるでしょう。さらに、効果的な研修制度や支援策を導入すれば、社員のスキル向上や業務効率化を図り、企業全体の競争力を高められます。
この章では雇用側の視点から、中小不動産が取るべき人材戦略について、次に挙げる6つの切り口から見ていきましょう。
・給与体系の見直し
・福利厚生の充実
・キャリアパスの明確化
・効果的な研修プログラムの設計
・資格取得の支援
・継続的な教育とリスキリングの推進
給与体系の見直し
中小不動産会社が優秀な人材を確保するためには、給与体系の見直しが不可欠です。大手企業に比べて給与水準が低い場合、求職者から選ばれにくくなるため、業界平均や地域の相場を参考に、競争力のある給与設定を検討する必要があります。
また、基本給だけでなく、成果に応じたインセンティブ制度の導入も効果的です。営業成績や業務成果に応じて報酬を支給すると社員のモチベーションを高め、業績向上にもつなげられます。
さらに、定期的な給与見直しや昇給の機会を設けていけば、社員の長期的な定着を促進できるでしょう。透明性の高い評価制度との組み合わせで社員の納得感を得られ、組織全体の士気向上にも寄与します。
中小不動産会社の新卒・中途採用の人事戦略について、以下の記事で特集しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
中小不動産会社向け人事戦略!新卒・中途採用の成功ポイントとは?
福利厚生の充実
給与面だけでなく、福利厚生の充実も人材確保において重要な要素です。健康保険や年金制度の整備はもちろん、育児休暇や介護休暇などの特別休暇制度の導入によって、多様な社員のニーズに応えられます。
また、柔軟な勤務時間やリモートワークの導入も、現代の求職者にとって魅力的なポイントです。ワークライフバランスを重視する傾向が強まっているため、これらの制度を取り入れると、幅広い人材層からの応募が期待できます。
さらに、社員の健康増進や自己啓発を支援する福利厚生も検討するとよいでしょう。たとえば、スポーツジムの利用補助や資格取得支援制度の提供により、社員の満足度とエンゲージメントを高められます。
中小不動産会社オーナーにとって重要な「離職率」を下げる5つの効果的な方法について、以下の記事で特集しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
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キャリアパスの明確化
社員のモチベーションを維持・向上させるためには、明確なキャリアパスの提示が重要です。昇進や昇格の基準を明確にし、社員一人ひとりが将来のキャリアを描けるようサポートしていけば、長期的な定着を促せます。
また、定期的なキャリア面談を実施し、社員の希望や目標を把握する取り組みも大切です。適切な人材配置や研修の提供が可能となり、社員の成長を支援できます。
さらに、リーダーシップ研修や専門スキル向上のためのプログラムの提供で、社員の能力開発を促進できるでしょう。組織内でのキャリアアップの機会を増やし、社員のやる気とエンゲージメントを高められます。
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効果的な研修プログラムの設計
不動産業界では、営業スキルの向上やコンプライアンス意識の強化が求められます。効果的な研修プログラムを設計するためには、まず研修の対象者を明確にし、実施方法やカリキュラムを具体的に設定しましょう。
たとえば、新入社員向けにはビジネスマナーや業界知識の基礎研修を、経験者向けには専門的なスキルアップ研修を提供するなど階層別の研修を設ければ、各社員の成長段階に応じた教育が可能となります。
また、実務に基づくOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)やメンター制度を組み合わせると、より実践的なスキル習得を促進でき、社員の即戦力化を図れるでしょう。
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資格取得の支援
社員の専門性を高めるためには、資格取得の支援制度の導入が効果的です。たとえば、宅地建物取引士や不動産鑑定士などの資格取得に対して、学費補助や勤務免除期間、合格時の奨励金を提供する企業もあります。
さらに、社員一人ひとりにメンターをつける制度を整えれば、キャリア形成のサポートを強化できるでしょう。メンターは定期的に面談を行い、業務上の悩みやキャリアの方向性について相談に乗って、社員のモチベーション向上や定着率の向上を促進します。
中小不動産が目指すべき業務効率化について、以下の記事で特集しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
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継続的な教育とリスキリングの推進
不動産業界は急速に変化しており、社員のスキルも時代に合わせて更新する必要があります。継続的な教育プログラムやリスキリング(新たな技能の習得)の推進で、社員は最新の知識や技術を身につけ、業務の質を向上させられるでしょう。
たとえば、デジタル化の進展に対応するためのITスキル研修や、法改正に伴うコンプライアンス研修など、時流に合わせた教育内容の提供が求められます。
また、社員の自己啓発を支援するためのeラーニング制度や外部セミナーへの参加支援など、多様な学習機会の提供により、社員の自主的な成長を促せるでしょう。
中小不動産会社のフランチャイズ加盟のメリットとデメリットについて、以下の記事で特集しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
中小不動産会社必見!フランチャイズ加盟のメリットとデメリットを徹底解説
まとめ

中小不動産会社の年収は、職種や地域、個人のスキルや経験によって大きく変動するものです。営業職では、成果主義のインセンティブ制度により、高収入を得るチャンスがあります。
一方、事務職や管理職では、安定した給与が期待できるものの、昇給幅はかぎられる傾向があります。地域差も考慮した、総合的な判断が重要です。
自身のキャリアプランを明確にし、適切なスキルアップや資格取得を目指すことで、よりよい条件での就業が可能となります。継続的な自己研鑽が、将来の年収向上につながるでしょう。