不動産業界におけるオンライン化の現状

不動産業界では、DX（デジタルトランスフォーメーション）の必要性が高まっています。しかし、他業界と比較してDXの推進が遅れているとの指摘があるのも事実です。
その背景には、従来のアナログ文化や業界特有の慣習が根強く残っている点が挙げられます。この章では、不動産業界におけるオンライン化の現状について、次に挙げる3つの視点から見ていきましょう。

・コロナ禍で加速する不動産業務のデジタルシフト
・Zoomを活用したバーチャル内覧
・IT重説の導入

コロナ禍で加速する不動産業務のデジタルシフト

新型コロナウイルスの影響で、不動産業界でもオンライン化の動きが加速しています。対面での接客や契約手続きが制限されるなかで、ITを活用した重要事項説明（IT重説）や電子契約の導入が盛んです。

その結果、非対面での取引が可能となり、顧客の利便性が向上しています。しかし、オンライン化には課題も少なくありません。

なお、不動産会社にとっての電子契約のメリットと注意点について、以下の記事で特集しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
不動産会社にとっての電子契約のメリットと注意点｜導入ガイドとQ＆A

Zoomを活用したバーチャル内覧

Zoomなどのビデオ会議ツールを活用したバーチャル内覧（オンライン内覧）が増加しています。これにより、遠方の顧客や多忙な方でも自宅にいながら物件の内覧が可能となり、顧客層の拡大につながっています。

また、バーチャル内覧の導入で、業務効率の向上や移動時間の削減といった効果も期待できるでしょう。バーチャル内覧では、スタッフが現地からリアルタイムで物件を案内し、顧客の質問にその場で答えられます。

対面での内覧と同様のサービス品質を維持しつつ、非対面での対応が可能です。さらに、録画機能を活用すれば、顧客は後から再度内覧内容を確認できます。

とはいえ、バーチャル内覧には限界もあり、実際の物件の雰囲気や周辺環境など、映像だけでは伝わりにくい情報があるのも否めません。バーチャル内覧と実際の現地内覧を組み合わせるなど、顧客のニーズに合わせた柔軟な対応が求められます。

なお、不動産業界の今後を左右するVR・ARに関しては、以下の記事でくわしく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
不動産業界を変えるVR・ARとは？中小不動産会社のための導入ガイド|不動産Web集客コラム

IT重説の導入

IT重説（オンライン重要事項説明）の導入により、重要事項説明をオンラインで行うケースが増えています。対面での説明が難しい状況でも、法的要件を満たした形で説明を実施できるようになりました。

しかし、認知度や利用率にはまだ課題があり、さらなる促進が求められます。IT重説を実施するには、双方向でのやり取りが可能なIT環境の確保がポイントです。

IT重説では、主にZoomやGoogle Meetなどのツールが使用されます。重要事項説明書や添付書類は、事前の送付が必要です。また、本番では宅地建物取引士証の提示を忘れてはいけません。

IT重説の導入により、顧客の来店負担の軽減や柔軟な日程調整が可能となるメリットがあります。ただし、画面越しでの説明内容の理解度を確認する工夫が欠かせません。また、物件の特性に応じて、対面とIT重説を使い分けるのが賢明です。

IT重説のメリットとデメリットや、中小不動産会社が押さえるべき導入ポイントに関しては、以下の記事でくわしく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
IT重説のメリットとデメリットとは？中小不動産会社が押さえるべき導入ポイント

Zoomを活用した業務効率化のメリット

不動産業界におけるデジタルトランスフォーメーション（DX）は、業務効率化や顧客満足度向上に寄与します。特に、オンラインツールの活用は、業務の自動化や効率化を促進するでしょう。
この章では、Zoomを活用した業務効率化の主なメリットとして、次に挙げる3項目を見ていきましょう。

・顧客との円滑なコミュニケーション
・移動時間の削減による生産性向上
・複数拠点との同時打ち合わせの実現

顧客との円滑なコミュニケーション

Zoomの活用によって、顧客とのスムーズなコミュニケーションが可能です。オンラインでの打ち合わせや相談が容易になり、顧客の利便性が向上してサービスの幅が広がります。

さらに、Zoomの画面共有機能を使えば、物件の資料や契約書の内容をリアルタイムで共有可能です。説明の効率が上がり、顧客の理解も深まります。また、録画機能を活用すれば、後から内容を確認するのも容易です。

しかし、オンラインでのコミュニケーションには、対面とは異なる難しさもあります。たとえば、表情や声のニュアンスが伝わりにくい場合があります。そのため、丁寧な説明や確認を心がける姿勢が重要です。

移動時間の削減による生産性向上

オンライン会議の導入により、移動時間が削減されます。これにより、従業員は重要な業務に時間を充てられるようになり、生産性が向上するでしょう。また、遠方の顧客とも容易に連絡が取れるため、営業範囲の拡大にもつながります。

さらに、移動に伴う交通費や宿泊費の削減も確実です。営業にかかる経費の節約が可能となり、企業の収益性向上に寄与します。また、従業員の負担軽減にもつながり、働きやすい環境の構築が進むでしょう。

しかし、オンライン会議の増加により、長時間の画面視聴による疲労感が懸念されます。適切な休憩や労働時間の管理が必要です。また、通信環境の整備も重要な課題となります。

複数拠点との同時打ち合わせの実現

Zoomを活用すれば、複数の拠点や関係者との同時打ち合わせが可能です。情報共有がスムーズになり、意思決定のスピードが向上します。また、全員が同じ情報をリアルタイムで共有できるため、誤解や伝達ミスの防止にも有効です。
さらに、録画機能を使えば、会議の内容を後から確認できます。議事録作成の際にも役立ち、参加できなかったメンバーとの情報共有にも役立つでしょう。

ただし、オンライン会議では、発言のタイミングや進行管理が難しい場合があります。適切なファシリテーションやルール作り、セキュリティ対策なども重要な課題です。

なお、不動産会社のDX戦略（AI・IoT・スマートホームなど）による業務変革に関しては、以下の記事でくわしく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
不動産会社の未来を拓くDX戦略！AI・IoT・スマートホームによる業務変革

オフライン業務との効果的な使い分け

不動産業界では、オンラインとオフラインの業務の適切な使い分けが重要です。オンラインツールの活用により、業務効率化や顧客との円滑なコミュニケーションが可能となります。
一方、対面での信頼構築や物件の現地確認など、オフラインでしか得られない価値も存在します。この章では、オフライン業務との効果的な使い分けについて、次に挙げる3つの角度から見ていきましょう。

・対面での信頼構築が必要な場面
・物件現地での詳細確認の重要性
・オンラインとオフラインのハイブリッド戦略

対面での信頼構築が必要な場面

高額な取引や重要な契約時には、対面での信頼構築が不可欠です。直接会うことで、顧客の表情や反応を読み取り、細かなニーズに対応できます。また、対面でのコミュニケーションは、顧客に安心感を与え、長期的な関係構築にも寄与するでしょう。

さらに、対面での打ち合わせでは、オンラインでは伝えきれないニュアンスや雰囲気を共有でき、顧客の信頼を深めて円滑な取引を促進します。特に、初めての取引や重要な意思決定の場面では、対面での対応が効果的です。

しかし、対面での対応には時間やコストがかかるため、必要性を見極めた上での使い分けが求められます。オンラインと組み合わせると、効率的な顧客対応が可能です。

物件現地での詳細確認の重要性

物件の細部や周辺環境の確認は、現地での確認が不可欠です。バーチャル内覧では伝わらない物件の雰囲気や周辺の生活環境を直接体感すると、顧客も納得感を高められます。また、現地での確認により、物件の状態や設備のチェックも正確に行えるでしょう。

さらに、現地訪問は、顧客が実際の生活をイメージする上で重要な役割を果たします。周辺の交通状況や生活施設の位置など、日常生活に直結する情報を提供可能です。顧客の満足度と信頼感の向上が図れます。

ただし、全ての物件で現地確認を行うのは非効率な場合もあります。バーチャル内覧やバーチャルツアーを活用し、興味を持った物件のみ現地確認を提案するなど、効率的な手法を取り入れるような、顧客のニーズに合わせた柔軟な対応が重要です。

オンラインとオフラインのハイブリッド戦略

オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド戦略は、顧客満足度を高める効果があります。オンラインでの情報提供や内覧、相談を行い、必要に応じて対面での対応や現地確認を組み合わせると、効率的かつ効果的なサービス提供が可能です。

また、オンラインなら、遠方の顧客や多忙な方にでも柔軟に対応できます。一方、オフラインでの対応は、顧客との深い信頼関係を築く上で重要な役割を果たします。両者の特性を理解し、適切に使い分ける取り組みが必要です。

このようなハイブリッド戦略の導入には、スタッフのスキル向上やシステムの整備が欠かせません。また、顧客のオンラインツールに対する理解度も考慮する必要もあります。これらの課題をクリアしていけば、効果的なハイブリッド戦略を実現できるでしょう。

ハイブリッド戦略を可能にするための大きな流れである「不動産テック」について、最新の動向と今後の展望を、以下の記事でくわしく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
不動産テックとは？最新の動向と今後の展望をわかりやすく解説！|不動産Web集客コラム

Zoom導入のためのステップと注意点

不動産業界におけるオンライン化の進展に伴い、Zoomの導入は業務効率化や顧客サービス向上に寄与します。しかし、効果的な活用には適切な準備と運用が不可欠です。
この章では、Zoom導入のためのステップと注意点について、次の3項目から見ていきましょう。

・必要な機材と環境の整備
・スタッフへの研修とスキル向上
・顧客情報のセキュリティ対策

必要な機材と環境の整備

Zoomを効果的に活用するためには、まず必要な機材と環境の整備が重要です。高品質なウェブカメラやマイク、安定したインターネット接続が求められます。

これらの機材は、バーチャル内覧や顧客との打ち合わせの際に、クリアな映像と音声を提供するために不可欠です。また、静かな場所や適切な照明も重要と考えましょう。

背景の整理や照明の調整により、プロフェッショナルな印象を与えられます。さらに、セキュリティ対策として、最新のウイルス対策ソフトの導入やファイアウォールの設定も検討すべきです。

これらの環境整備により、オンラインでの業務が円滑に進行し、顧客からの信頼も得られるでしょう。

スタッフへの研修とスキル向上

Zoomの効果的な活用には、スタッフのスキル向上が不可欠です。まず、基本的な操作方法や機能についての研修を実施しましょう。これにより、スタッフは自信を持ってオンラインでの業務に取り組めます。

さらに、オンライン特有のコミュニケーションスキルも重要です。画面越しでも顧客に安心感を与える話し方や、適切な表情・ジェスチャーの使い方を学べば、顧客満足度の向上が図れます。

定期的なロールプレイやフィードバックを通じて、これらのスキルを磨いていきましょう。また、スタッフ間での情報共有や問題点の共有も大切です。組織全体でのスキル向上と、サービス品質の向上が期待できます。

顧客情報のセキュリティ対策

オンラインでの業務では、顧客情報の保護が最優先事項です。Zoomを使用する際には、会議のパスコード設定や待機室機能の活用など、セキュリティ機能を適切に設定すれば、第三者の不正アクセスを未然に防げます。

また、顧客情報を取り扱う際には、データの暗号化やアクセス権限の管理の徹底が必要です。スタッフにも情報セキュリティに関する教育を行い、意識の向上を図りましょう。定期的なセキュリティチェックや、システムのアップデートも欠かせません。

さらに、万が一の情報漏洩に備えて、迅速な対応策を整備しておくのも重要です。そういった対策によって顧客からの信頼を維持すれば、安心してサービスを利用してもらえます。セキュリティ対策は、オンライン業務の基盤として常に意識すべき課題です。

なお、セキュリティ対策と先導すべき、社内の「コンプライアンス」の強化方法ついては、以下の記事で特集しています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
不動産業界のコンプライアンス強化ガイド【中小企業向け実践的アプローチ】

Zoom活用による不動産業界の成功事例

不動産業界では、Zoomなどのオンラインツールの活用で、業務効率化や顧客満足度の向上を実現した事例が増えています。これらの成功事例は、デジタルトランスフォーメーション（DX）の推進において参考になるでしょう。
この章では、Zoom活用による不動産業界の成功事例を、次に挙げる3つの側面から見ていきましょう。

・バーチャル内覧による顧客層の拡大
・オンライン契約手続きの導入による業務効率化
・社内会議のオンライン化による生産性向上

バーチャル内覧による顧客層の拡大

中小不動産A社では、Zoomを活用したバーチャル内覧サービスを導入しました。これにより、遠方の顧客や多忙な方でも自宅にいながら物件の内覧が可能となり、顧客層の拡大につながっています。

また、バーチャル内覧の導入によって、業務効率の向上や移動時間の削減といった効果も得られました。さらに、バーチャル内覧の導入により、顧客とのコミュニケーションが円滑になり、契約率の向上も実現しています。

顧客からは、「自宅にいながら複数の物件を比較検討できる」と大変好評です。このように、バーチャル内覧は顧客満足度の向上にも寄与しています。

オンライン契約手続きの導入による業務効率化

中小不動産B社では、Zoomを活用したオンライン契約手続きを導入しました。これにより、対面での契約手続きが難しい状況でも、非対面での契約締結が可能となり、業務効率が向上しています。

また、電子契約の導入により、ペーパーレス化や書類管理の効率化も実現しました。顧客からは「来店不要で契約が完了するため、時間の節約になる」と高い評価を得ています。

さらに、契約手続きのスピードアップにより、迅速な入居や物件引き渡しが可能となり、顧客満足度の向上にもつながりました。

社内会議のオンライン化による生産性向上

中小不動産C社では、社内会議をZoomでオンライン化しました。従業員の移動時間が削減され、業務に集中できる時間が増加しています。また、リモートワークの推進にも寄与し、柔軟な働き方の実現につながりました。

オンライン会議の導入により、全国の支店や拠点との情報共有がスムーズになり、意思決定のスピードも向上しています。さらに、会議の録画機能の活用で、欠席者への情報共有や議事録作成の効率化も実現しました。

【不動産分野での起業を考えておられるみなさんにおすすめの記事】
不動産分野での起業の際の集客のアイデアについて、以下の記事でくわしく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にご覧ください。
不動産起業の成功への道｜アイデアから実践までの徹底ガイド|不動産Web集客コラム

まとめ

Zoomの導入は、不動産業務の効率化や顧客満足度の向上に大きく寄与します。オンラインとオフラインの業務の適切な使い分けによって、顧客との信頼関係を深め、業績向上につなげることが可能です。
しかし、効果的な活用には、適切な機材の整備やスタッフのスキル向上、セキュリティ対策などの準備が不可欠です。成功事例を参考にしながら、自社の業務に最適なオンラインツールの活用方法を検討し、業界内での競争力を高めていきましょう。